コーポレートストラテジー
【前編】かが屋 in ニコン!かが屋はどこまでニコンを知っている?ニコンミュージアムで「カメラだけじゃない」ニコンを探究!
日々ニコンのカメラを持ち歩き、「ニコンファン」として知られるお笑い芸人「かが屋」の加賀さん。相方の賀屋さんや芸人さんの日常を独特な視点で捉えた写真は、SNSやメディアで話題です。
今回は、かが屋のお二人に「カメラだけじゃない」ニコンを知り、ニコン愛を深めてもらうため、ニコン本社に併設されているニコンミュージアム(※1)にお越しいただきました。
(※1)ニコン本社移転のため2024年3月1日(金)から長期休館中。今秋、新本社にてリニューアルオープン予定。
かが屋のお二人がニコンミュージアムを探究している動画はこちら
芸人引退後はニコン社員に!?
ニコンミュージアムは、100年以上に渡って受け継がれるニコンの思いと進化を訪れる方たちにお伝えすることを目的とし、2017年の創立100周年を記念して2015年10月に開館した博物館。これまでに18万人以上の方にご来場いただいており、ニコンファンの加賀さんもプライベートでもニコンミュージアムを訪れたことがあるそうです。
「ようこそ!」
自前の「Nikon」ポロシャツを着て、「ニコン側」の人として賀屋さんを出迎える加賀さん。「芸人を引退したときは、ニコンさんで働かせてもらおうと!」と野望を口にしています。
ニコンの歴史や事業を知り尽くした、ニコンミュージアムの井上さん、ニコン デザインセンターの橋本さんが、かが屋のお二人をご案内します。館内を回りながら、かが屋のお二人にはニコンにまつわるクイズに答えてもらいます。
ニコンミュージアム 井上靖浩(左) / ニコン デザインセンター長 橋本信雄(右)
クイズを始める前に橋本さんがお二人に質問したのは、「ニコンって何の会社のイメージ?」。この問いに、すかさず「カメラ!レンズとカメラ!」と熱く答える加賀さん。長年ニコンをご使用いただいている加賀さんらしい即答ぶりです。賀屋さんも「カメラのイメージが強いです」と答えます。
でも、ニコンは「カメラだけの会社」ではないんです。さっそく見ていきましょう!
突然「びっくりするよ」と加賀さん。ここでもなぜか、ニコン社員のようなふるまいです(笑)。
さて、さっそくクイズの第1問。
「ニコニコレンズ!」とボケる賀屋さんですが、さて、正解は?
なお、日本光学工業として創業したのは1917年。東京計器、岩城硝子、藤井レンズの3社が1つになって誕生した会社です。ただ、カメラの製造を始めたのは戦後のこと。「カメラの会社」というイメージの強いニコンですが、実はカメラ製造の歴史は比較的新しいんです。
「なるほどねー。なんでNikonの語尾が“n”なんだろうと思ってましたが、“なんとなく”だったんですねー(笑)」と加賀さん。親しみを持ってもらいやすくするための“n”だったんです。
ニコンを根幹で支える2つの技術とは?
次にご覧いただいたのは、大きな合成石英ガラスのインゴット。神奈川県相模原市にあるニコンの工場で製造されているもので、半導体の製造を支える半導体露光装置の投影レンズに使われています。
なんと全長約130cm、重さは約850kg。「でっか!めちゃくちゃ重いじゃないですか!」と賀屋さん。「この大きさにするまでに、丸1ヵ月かかるんですよ」という井上さんの説明に、加賀さんも「すげえ…!」と驚きます。紫外線透過率99.5%以上の透明度を誇るガラスは、ニコンの様々な事業の源であり、技術の結晶です。
さて、技術の話が出てきたところで、第2問!
「レンズをどれだけきれいに磨けるかと、自分もどれだけきれいに磨けるかってことじゃないですか?」とまたまたボケる賀屋さん。「困らせる答えを言うなよ!」と加賀さんが突っ込みます。
「でも、近いんですよ」と橋本さん。さて、答えは?
「いや、これは難しいわ。『光利用技術です!』とは出てこない…」とお二人。少し難しかったですね。
加賀さんのカメラ愛が爆発。歴代のニコンカメラ約500台の陳列が圧巻
次にやってきたのは、加賀さんの大好きな!カメラの展示コーナー。
「何台あると思いますか?」の問いかけに、間髪入れず「500台くらいですか」と加賀さん。さすが、大正解です。
「ただ、ニコンが作ったカメラは1000種類以上あるんです。ここには全部入りきらないんですよ」と井上さん。
カメラコーナーには、ニコンが創業された100年以上前となる戦前の資料から、現在に至るまで、カメラの歴史がわかる展示がたくさん。
500台すべてを見て回ると時間がいくらあっても足りないので、今回は井上さんがいくつかピックアップしてかが屋のお二人に紹介しました。
<ニコン F>
1959年に発売された、ニコン初のレンズ交換式一眼レフカメラ。ニコンの名が世界に知られるようになるきっかけとなったカメラです。
「ぜひ手に取ってみてください」という井上さんの言葉を受け、うきうきしながらニコン Fを手に取り、シャッターボタンを押す加賀さん。ファインダーは覗かず、シャッター音にうっとりする様子に、賀屋さんが「普通覗くよ!」と突っ込みます。
<ニコン F3 NASA>
1980年にアメリカ航空宇宙局(NASA)に納めた一眼レフカメラ。左が“ビッグカメラ”、右が“スモールカメラ”と呼ばれ、1981年には“スモールカメラ”がスペースシャトル「コロンビア号」に搭載されました。
「今もニコンのカメラは宇宙空間で活躍しているんです」との説明に、「すげえ!」と賀屋さん。「船外活動用の太いグローブをつけていても操作しやすいよう出っ張り部分が大きく作られているんです」と井上さんが話します。
<ミラーレスカメラZシリーズ>
最後に紹介したのはミラーレスカメラのZシリーズ。加賀さんが愛用しているのは、2023年5月に発売された“Z 8”です。
Z 9の機能を凝縮し、小型化したのがZ 8。
「これ、これだけ小さくするのは大変だったんじゃないですか?」と尋ねる加賀さんに、「たいっへんだったんですよ」と溜めて答える井上さん。「この大きさにすることがどれだけ大変か…!」
「電池が小さいのが本当にすごいんだよ!」と賀屋さんに熱弁する加賀さん。Z 8への愛が伝わる熱い語りをありがとうございます!
今もなお復刻版が発売されている、100年以上前に生まれた「双眼鏡」
圧巻のカメラ500台を見た後にやってきたのは、双眼鏡のコーナー。
<ミクロン(MIKRON)>
1921年にニコンの前身となる日本光学工業が初めて、開発・設計・製造すべてを行った双眼鏡のひとつ。現在では、ニコンが誇る双眼鏡の代名詞として、当時の構造を保ちながら復刻版が販売されています。
実際にミクロンを手にした賀屋さんは、そのあまりのコンパクトさに驚きの表情を浮かべていました。
皆さんのスマートフォンにも、ニコンの技術が活きている!
次に、産業製品の展示に移ります。
<半導体露光装置>
まず登場したのは、半導体を作り出すのに欠かせない半導体露光装置。「史上最も精密な機械」と呼ばれています。展示されているのは、1984年に開発された装置。
「未来技術遺産(※2)に登録されているんです」という井上さんに、「えーーー、そんなのあるんだ!」とかが屋のお二人。
(※2) 「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」は、日本の科学技術の発展を示す科学技術資料の保存を促し登録する制度です。科学技術を担ってきてくれた先人たちの経験を次世代に継承していくことを目的に2008年から行われています。
さて、ここで第3問です!
「エアコンだと思います!」と回答する賀屋さんに対し、ほくそ笑みながら「ひっかけです!」と加賀さん。そんな加賀さんの答えは「全部使われています!」。
さて、正解は?
「真剣に考えたのに!」という賀屋さんを華麗にいなし、
「いま、半導体がない生活なんて考えられないですもんね」と、カメラ目線で話す加賀さん。
加賀さんの言う通り、半導体はいまや日常生活に欠かせないもの。デジタルカメラやパソコン、スマートフォンなどの電子機器に搭載され、演算や記憶などを行う電子部品です。
そんな半導体の製造に欠かすことができず、また半導体の進化に大きく貢献しているのが、ニコンの半導体露光装置です。半導体露光装置は、真ん中に入っている投影レンズを通して回路パターンを4分の1、5分の1に縮小し、シリコンウェハという基板に焼き付けています。
半導体露光装置に入っている投影レンズは、1980年代においては1mm幅に数百本ほどの解像力でしたが、現代では1mm幅に10万本を焼き付けるまでに。露光装置の進歩によって、高精度化や小型化する半導体を創り出すために投影レンズはどんどん大型化しています。
<FPD露光装置>
FPDはフラットパネルディスプレイの略。液晶テレビ、パソコン、スマートフォンの画面にあたるものです。FPD露光装置は、ガラス基板パネルに回路を焼き付ける装置で、ミュージアムには、2009年に発売された製品の模型が展示されています。
なぜ展示されているものが模型なのか。それは実際の装置の大きさにあります。なんと、この装置、実際にはダブルスのテニスコートぐらいの大きさなんです。
「えー!」「すご!!」とかが屋のお二人。
「この装置がないと、スマートフォンが作れないんですよ。お二人のスマートフォンも、この装置を使って作られたものかもしれませんね」と井上さん。こんなところにもニコンの技術が使われているかもと知り、ただただ驚くお二人でした。
<Lasermeister(レーザーマイスター)>
次に紹介したのは、金属3Dプリンター「Lasermeister」です。半導体露光装置を製造することで培った高度な“光利用技術”と“精密技術”によって生み出された機械で、細かな金属パーツの製作などに使われています。
「実は一般的な金属3Dプリンターと比較すると重さは約5分の1、床面積も10分の1と、かなりのコンパクト化に成功しているんです」と井上さん。
光源を無駄なくフル活用する光学設計、軽く小さく高効率なガラスを自社開発し、超小型で軽量の集光レンズの開発に成功したこともコンパクト化が実現した理由です。
「ニコンはこのように、さまざまな時代のニーズに応えた製品開発にチャレンジをし続けている会社なんです」と説明する井上さんに、「なるほど」「すごいな」と感嘆するかが屋のお二人でした。
<バイオ・医療機器>
創業当初から顕微鏡の製造を手掛け、多様な製品を開発してきたニコン。1925年に製造された初期のニコン顕微鏡は、「JOICO顕微鏡」と呼ばれるもので、2025年に100周年を迎えます。実はこの100年という期間はカメラより歴史があるのです。
<宇宙>
最後に案内したのは、宇宙コーナー。
実はニコンは、本格的な天体望遠鏡を手掛けた日本初のメーカー。今でも、国内の展望台や科学館などで、20台以上の天体望遠鏡が使われています。
また、2006年に打ち上げられた赤外線天文衛星“あかり”には、ニコンの赤外線望遠鏡が採用されていました。「最近では、人工衛星から地球を観測するようになったため、衛星に搭載するものも開発しているんですよ」と井上さん。
また、ミュージアムには小惑星探査機「はやぶさ2」が2020年12月に持ち帰った小惑星リュウグウのかけらのレプリカも展示。かけらの観察や分析にJAXAが使っているのが、ニコンの“小惑星微粒子観察用顕微鏡システム”です。「宇宙で撮るのも、持ち帰って調べるのもニコン製品なんですね」と賀屋さん。
ニコンミュージアムは2024年秋にリニューアルオープン予定
カメラコーナー以外の展示も興味津々なかが屋のお二人。「とっても楽しい時間でした!」と加賀さんにもご満足いただけたようで、ニコンチームにも思わず笑みがこぼれます。
ニコンミュージアムは2024年秋に、品川区西大井の地でリニューアルオープンの予定です。展示数もさらに増え、よりニコンについて知っていただける場を目指して準備を進めています。
クイズに答えてくれたかが屋のお二人には、ニコンから参加賞をプレゼント!Nikon CREATORSのニットキャップや、ニコンが販売する唯一の食品、ニコン一口ようかんをお贈りしました。
「これいいじゃん!」と即座にニットキャップを被る賀屋さん。ニコンようかんについては「ここでも探究しすぎです!」と一言。ニコンミュージアムでニコンに関する知識を深めたお二人は、ニコンようかんのパッケージに記載されている写真が「ニコン FとJOICO顕微鏡」であることもバッチリ理解しています!
最後に、賀屋さんから「ニコンが未来に向けて、これからやりたいことや、目指すところはあったりするんですか?」との質問が。
「ニコンは『2030年のありたい姿』というものを掲げていまして、2030年に向け『人と機械が共創する社会の中心企業』を目指していきます。培ってきた技術を使いながら機械だけじゃなくソフトウェアやソリューションで社会を支えていく。結果的に『ニコンだからできたよね』と言ってもらえるよう、さまざまな分野で価値を提供していきたいですね」と橋本さん。
「カメラだけじゃない」、ニコンの歴史や技術についてたっぷりご紹介したニコンミュージアムの見学ツアー。かが屋のお二人がさらにニコンを好きになってくれていることを祈っています。
※所属、仕事内容は取材当時のものです。