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インダストリー

現代社会に欠かせない「半導体」を生み出すコア装置「半導体露光装置」の製造現場へ!<若手社員がニコンの「いま」に潜入 vol.2>

現代社会に欠かせない「半導体」を生み出すコア装置「半導体露光装置」の製造現場へ!<若手社員がニコンの「いま」に潜入 vol.2>

スマホやパソコン、身近な家電から、はたまた車まで。身の回りのありとあらゆるものに組み込まれ、私たちの便利な生活を支えている半導体。いまやデジタル家電だけでなく、映像や自動運転、AIに至るまで、あらゆるテクノロジーに欠かせないものになっています。

実は、皆さんの身の回りにある多くの電子製品に組み込まれている半導体 には、ニコンの技術が活きています。ニコンは、半導体を製造するために欠かせない装置の1つ、半導体製造の「要」ともいえる「半導体露光装置」を展開する世界で3社しかいないうちの1社。とても小さなチップである半導体の製造は、私たちの目では捉えることが難しいほど、光と精密さの極みで勝負するミクロな世界。極めて精密な世界を作りだす半導体露光装置には、ニコンが培ってきた最先端の光学技術が活きています。

「人と機械が共創する社会の中心企業」を目指すニコンの「いま」を若手社員が紹介していく本連載。第二回は、入社1年目の新入社員である小林 泉結さんと上島 菜那さんのお二人が埼玉県熊谷市のニコン 熊谷製作所を訪れ、人類史上最も精密な機械といわれる「半導体露光装置」の製造現場に迫ります。

第一回記事はこちら

【若手社員プロフィール】

世界が舞台、ニコンの半導体装置事業

ニコンの半導体露光装置の本拠地は、埼玉県熊谷市にあります。今回訪問したニコンの熊谷製作所は、半導体露光装置の開発から製造までを一貫して手掛けているほか、ロボットビジョンや金属3Dプリンターを扱う次世代プロジェクト本部の開発拠点でもあり、関係会社や協力会社を含め約2,000人が働いています。

小林さんと上島さんの2人を迎えてくれた精機事業本部マーケティング部の熊谷さんが、半導体製造の工程について説明してくれました。

「半導体の製造には複雑で膨大な数の工程があり、大きく前工程・後工程の2つに分けられます。ニコンはその前工程の1つ、露光工程でシリコンウェハに微細な電子回路をつくる装置を製造しています。半導体デバイスはほんの数mm四方の小さなシリコンのチップで、髪の毛の数千分の1ともいわれる、目に見えない回路が刻まれています。その回路を刻む役割を担うのが半導体露光装置なんです」(熊谷さん)

ニコンの半導体露光装置の精度を例えるならば、東京から富士山のてっぺんのりんごを弓矢で撃ち抜くほどだそう。小林さんと上島さんは目を丸くしています。半導体が世の中で重要性を増し「産業のコメ」といわれた1980年代から、半導体露光装置をリードしてきたニコンの技術力に触れることができそうです。

熊谷さんは続けて、ニコンの半導体事業の魅力や強みについて話してくれました。
「1つめはワールドワイドなこと。お客様のほとんどは海外であり、アジア、ヨーロッパ、米国に9つの現地法人があり、各地のお客様と密な連携が取れています。お二人の先輩も海外でたくさん活躍していますよ!2つめはチームワークです。半導体装置事業部の仕事は、企画から開発、製造技術・品質保証、販売・サポート、そして振り返りとプロジェクト単位で進めるためチームワークが重要ですが、チームワークの良さは、わたしも日々実感しています。3つめは新商品を続々と生み出していることです。2023年には微細系の半導体向けのArF液浸スキャナー「NSR-S636E」と非微細系の半導体向けの縮小投影倍率5倍 i線ステッパー「NSR-2205iL1」の販売を発表しました」

さあ、それでは半導体露光装置の開発・製造現場に潜入です。

クリーンルームで製造されるのは極めて精密な装置

半導体露光装置は製造作業中に製品に付着する微粒子が品質に大きく影響するため、クリーンルームで作業が行われます。半導体露光装置の製造現場へと潜入する小林さんと上島さんも、防塵服と呼ばれるクリーンルーム用ウェアに着替えます。

エアーシャワーで身体に付着したゴミやチリを強い風で吹き飛ばし、最初に向かったのが、シリコンウェハが置かれるステージの組み立て工程です。

ここではモジュールの周囲に人が集まり静かに作業が進んでいました。半導体露光装置は様々なモジュールをそれぞれ組み上げ、精度を満たしてから、最終的に1台の巨大な装置として作りあげます。見学しているのは終盤に近い工程です。

現場責任者の山岸さんが説明してくれました。
「実はここからが長くて。部品を組んだ後に、基準に合わせて位置合わせをして行かないと精度があがりません。部品を組み付けたら終わりではないのですよ」(山岸さん)

上島さんが興味深そうに問いかけました。
「完成までどのくらいの期間がかかるのですか?」(上島さん)

「組み立て工程は検査工程も含めて全体で約2カ月程度です。ちなみにこの工程では組み立てを2人から3人で行います。モジュールをクレーンで吊り上げたりする工程があるので複数人で協力して行うんです」(山岸さん)

現場ではあらゆるところにビニールがかかった棚が目に入ります。
「部品がチリで汚染されないように保護しています。ステージのミラーなど反射する部分にわずかな異物がつくだけでエラーになってしまいます。ウェハのステージに使用している部品は1個数百万円以上のものもあるので、汚染されないようにケバがでない素材でおおっているんですよ」(山岸さん)
続いては組み上がった「半導体露光装置」の見学です。

圧倒されるほどの大きさの装置が生み出す、ミクロの世界

「うわっ、大きい!」小林さんも上島さんも、のけぞっています。
部屋の扉が開き、目に飛び込んできたのが、ニコンが誇る超高精度と生産性を両立させた半導体露光装置。その高さは2階のフロアに届くほど。

上島さんが、その大きさに驚きながら質問しました。
「お客様にはこのまま輸送するのですか?」(上島さん)

開発統括部の手島さんが答えてくれました。
「さすがにこの大きさのものをそのまま運ぶことはできないので、検査が完了したものをモジュール単位に分けて出荷し、お客様の元で組み立てます。届けるだけでなく、設置し、また精緻な調整を現地で行って初めて納品となるのが、半導体露光装置です」(手島さん)

これほど大きな装置が作り出すミクロの世界について手島さんが続けます。
「半導体露光装置に要求される精度はナノメートル(nm)の世界です。1nmとは1mmの100万分の1。ウイルス1個の大きさが数10nmですから、それより小さな幅の回路を寸分違わずウェハに作り出さなくてはなりません。就職活動をしたときにいわれたのは『2機の戦闘機が翼の間に”ノミ”を挟みながら飛行するレベル』だと。装置の開発は精度を0.1nm向上していく世界です。私が担当しているのはスループット、いわゆる生産性の向上ですが、こちらは処理時間を0.1秒縮めていく世界です(笑)」

「就職活動中の学生に半導体事業の説明をする際、ニコンは『人類史上最も精密な機械』の開発に初めて成功したと口ではお伝えしてきたのですが、今回初めてその凄さを実際に体感できました!」(小林さん)
小林さんが今後、学生さんに説明する際の言葉により一層熱がこもりそうです。

「半導体露光装置」を作れるのは、世界で3社のみ

半導体露光装置の製造開発現場を見学し終えた小林さんと上島さんが、半導体装置事業部の3人の先輩社員にグローバルに事業を展開する半導体露光装置に携わることの魅力に迫ります。トップバッターは開発統括部の手島 由博(てしま よしひろ)さんです。

― 手島さんは半導体露光装置に興味があって入社されたのですか。

手島さん:就職活動のときは深い技術の話は正直わかりませんでした。でも最先端の半導体製造装置において、世界を舞台に技術競争をしていくのも面白そうだと思い、入社しました。半導体露光装置を作ることができるのは世界広しといえども3社しかありません。その中でもAll Nikonですべてのモジュールを自社製造できるのはニコンの強みだと思っています。

― 人類史上最も精密な機械といわれる理由はなんでしょうか。

手島さん:桁違いの高度な精度が求められる点です。先ほどと異なる例えをすると、半導体露光装置に求められる精度は、時速300kmのレーシングカーが1ミクロンもずれることなく、サーキットの同じ軌道を走行するレベルといわれます。高速で動くことと高い精度の両立が求められます。

半導体露光装置は『目にする機会は多くはないものの、尖っている』技術を持つ機械です。未来では我々の創造を超えた技術革新が次々に起きてくるかもしれません。そうしたエッジを支えるのは半導体であり、半導体露光装置がそうした未来を作り出すのだと思います。

続いてアジア営業部の菅原 未咲(すがわら みさき)さんに伺います。

― 菅原さんは、なぜニコンの半導体部門に入社されたのですか。

菅原さん:私は文系出身ですが、前職の会社で半導体製造装置に関わっていました。世界で3社しか作れない半導体露光装置を、ニコンが製造していることに魅力を感じ入社しました。

現在、営業として海外のお客様とお取引をしています。そうした中、心がけていることは開発部門や製造部門としっかりとコミュニケーションをとりながら仕事を進めていくことですね。成果を出すためには明確なゴール設定が必要です。チームワークの良さはニコンの半導体装置事業部の強みと先ほど熊谷さんのお話にもありましたが、私は営業としてゴールを決めてリードすることを意識しています。

お客様には最先端の装置を求めているお客様だけでなく、20年前、30年前の装置を使って半導体を製造しているお客様も多くいらっしゃいます。最新を追求するだけでなく、一度ご購入いただいた装置を長く使っていただけるようにサポートしていくことも大事なことだと思っています。

― 未来に向けて行っていることはありますか。

菅原さん:お客様の声を聞き取り伴走するVoC(Voice of Customer)活動をしています。このプロジェクトを成功させて社内にフィードバックして、より良い装置をつくっていきたいですね。

生産統括部の福田 絋輝(ふくだ ひろき)さんは生産統括部で原価計算の役割を担っています。

― 福田さんは、なぜニコンの半導体装置事業部に就職されたのですか。

福田さん:最初から半導体装置事業部を志望して就職活動を行いました。当時は『衣食住と同等になくてはならないものが半導体ではないだろうか』と考え、その生産に携わりたいと思ったからです。今は就職活動時の熱意を持ちつつも、冷静に仕事に取り組んでいます。半導体は便利な社会に貢献する縁の下の力持ちだと思っています。スマホをはじめとした身近な電子デバイスがない世界はもはや考えられないですよね(笑)。

―半導体事業部の特徴にチームワークがあります。福田さんが考えるチームワークについて教えてください。

福田さん:そもそも半導体露光装置ができていることがチームワークの賜物なのかなと。特に開発部門のチーム感はすごいですね。今日現場で見たあれだけ大きな装置を作りあげるため、それぞれのモジュールを開発したり、設計したりするチームがあります。全員の歯車が噛み合わないと、手島さんが言っていたような、細胞より小さいナノの世界の精度を正確に届けられません。

最後に半導体装置事業部のアピールポイントを3人に伺いました。

菅原さん:ワールドワイド!です。お客様は世界中にいらっしゃるので世界と仕事ができることです。

手島さん:技術力を持って世界にアピールできるところですね。

福田さん:ワールドワイドであることもそうですが、働いていて結束力のある職場だと感じます。

スマートフォンやVR、ARといった新しい電子機器やAI技術などの開発により半導体市場は盛り上がりをみせており、より一層「なくてはならないもの」となっている半導体。半導体製造にあたる心臓部を担う半導体露光装置は、熊谷の地を中心としたグローバルで強力なチームによって進化を続け、新たな技術と未来を築く礎となっています。

ニコン半導体装置事業について


※所属、仕事内容は取材当時のものです。

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どのような場面からニコンの製品は生み出されているのか……。
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