コーポレートストラテジー
【後編】キッズプログラム in 世界水泳2023福岡 ~「見える世界」が広がる体験を子どもたちに~
熱戦が繰り広げられた、『世界水泳選手権2023福岡大会』(開催期間:7月14日~30日)。ニコンもオフィシャルパートナーとして、スポーツの限界に挑むアスリートにエールを送りました。また、未来を担う子どもたちにニコンの事業を通して、「学ぶ」楽しさを育み、未来の社会を担ってほしいという想いから、子どもたちを対象としたキッズプログラムをはじめとする様々なアクティベーションを展開し、大会の活気づくりにも力を添えました。
世界水泳におけるニコンの様々な取り組みの模様をレポートする本記事。後編となる今回は、7月26日に行ったワークショップの様子と、運営スタッフへのインタビューを中心にお届けします。
前編はこちら
アスリート気迫の瞬間をカメラに収める「プロカメラトライ」
この日は、九州地方在住の小中学生8人を招待し、バックステージツアーの後、二つのワークショップを開催しました。
まず向かったのは、ニコンブースの近くにある水球の練習施設。ここでは、フォトグラファーの使うカメラで選手の写真を撮影する「プロカメラトライ」を行いました。用意したカメラは「Z 7II」。スポーツの現場で活躍する機材の一つです。
講師であるプロフォトグラファーから、カメラの持ち方、使い方、そして撮り方についての説明を受けたら、さっそく撮影に移ります。選手がゴールネットをねらう瞬間を追ったり、プールサイドに立つコーチを撮影したりと被写体はそれぞれ。撮影後はプロと一緒に写真を見ながら一人ずつ講評をもらいます。
ずっしりとしたカメラの重さに驚く子どもたち。けれども、ファインダーを覗く表情にはプロに負けない真剣さがあります。
子どもたちからは、「プロカメラマンの気持ちになれた。結構うまく撮れたと思う」「『構図がいいね』って褒めてもらえました」と、楽しんでいる様子をうかがえました。
もっと近くに、もっとダイレクトに。顕微鏡で覗くミクロの世界
次は、ミクロの世界へ。プログラムは、ニコンの実体顕微鏡で様々な生物や身近なものを覗く「顕微鏡ワークショップ」へと移ります。
「顕微鏡は医療現場でのウイルスの検査や細胞の観察、工場では製品の測定・検査など、様々な用途で活躍しています」。講師であるニコン社員から、このような説明を受けた子どもたちの前には、6台の顕微鏡が。これらもまた精密機械を扱う工場や医療機関の病理検査の現場で実際に用いられているものです。なお、観察物には昆虫の標本、貝殻、ドライフラワー、競泳用水着、メダカの卵などを取り揃えました。
まずは用意された観察物を覗いてみます。理科の授業で顕微鏡を扱ったことのある子どもも多く、慣れた手つきでレンズを回し、上手にピントを合わせます。なお、ワークショップでは顕微鏡に写った観察物を右眼で見ながら、左眼でスケッチすることにも取り組みました。
一通りミクロの世界に触れたら、今度は自分の持ち物の中から顕微鏡で覗いてみたいものを見ることに。子どもたちは、500円硬貨や千円紙幣、ぬいぐるみ、スマートフォンなど興味の向くまま顕微鏡に載せて、“普段見ているのに見えていないもの”に迫りました。
スマホケースを覗くと、見えなかったキラキラの正体が見えてきた。
顕微鏡で観察したものを絵に起こしながらレポート。これまで見えてなかったミクロな世界が鮮明に表現されています。
カメラが好きで今日を楽しみにしていたと話す、まさきくん(小6)が観察したのは、ぬいぐるみや玩具の表面。「目で見るよりも細かく詳しく見えた。なんだか不思議な感じ。ほかにもいろいろ見てみたい」と話します。
蝶々の標本を観察したえりなさん(中2)は、「羽を細かいところまでゆっくり観察できました」と満足げ。また、自分のスマートフォンに装飾されたラインストーンも覗いたそうで、「きれいだった」と笑顔を見せます。
普段の生活ではなかなか得られない、二つの「覗く体験」。子どもたちの「もっと覗いてみたい」を刺激する良い機会になったようです。
以下は、キッズプログラムに対する子どもたちの感想です。
「顕微鏡ワークショップでは、『これってどう見えるかな?』という探求心をくすぐられた。自由研究のテーマを考えるうえで良い刺激になりました」
「小さいときから水泳をしてきたので、国際大会を初めて見ることができてよかったです。トップスイマーの泳ぎは勉強になりました。明日は自分も水泳大会を控えているので、頑張りたいです」
「日本の選手の泳ぎを見られてよかった。テレビで観るよりも迫力がありました」
ニコンのプロダクト・サービスを通して、ワクワクする気持ちを届けたい
運営スタッフは、キッズプログラムに対する想いや実施の手ごたえを、このように話します。
全体統括:デザインセンター コーポレートブランディンググループ長 斎藤久美子
カメラワークショップ担当:デザインセンター IDグループ 山田ひかり
顕微鏡ワークショップ担当:(株)ニコンソリューションズ 執行役員 バイオサイエンス営業本部 本部長 大場敬生
キッズプログラム開催の背景
斎藤:私たちニコンは企業活動を行うにあたり、どのような場所で、どのような人たちに貢献できるかを常に考えています。本プログラムは、未来を担う子どもたちに普段はなかなかできないような体験を通じて、何か夏休みの思い出や、気づきを与えられるお手伝いができれば、という思いから実現に至りました。
ワークショップに込めた思い
山田:デザインセンターメンバーによるカメラオブスキュラを作成するキッズワークショップは、15年前から行っているワークショップです。今回、コロナ禍を経て3年ぶりの開催となりました。レンズの持つ不思議な力を体感してもらうこと、デザインとの出合いの場をつくることを目的にしています。
大場:顕微鏡ワークショップは今回、初めての試みとなりました。観察物として様々なものを用意しましたが、なかでもメダカの卵や生物の細胞は、小さなものにも命があることの尊さや、私たち動植物はみんな細胞から出来ていることを感じてもらいたい思いがあります。また貨幣も、顕微鏡で覗けば非常に精緻なつくりがされていることに気が付きます。このように普段見ているものも視点が変われば新しい発見や驚きのあることを知ってもらえればと思いました。
ワークショップ中の子どもたちの様子について
山田:カメラグリップの制作にあたっては、アイデアの参考にしてもらおうといろいろな例を用意していたのですが、子どもたちはそれらにとらわれず、自分の意思と発想を持って思い思いにデザインしていました。私たちが期待していた以上の反応があり、とても嬉しく思いました。
大場:顕微鏡ワークショップでは、観察に長けている子、スケッチのうまい子、きょうだいで譲り合って観察する子など、たくさんの良さを見つけることができました。ワークショップが終わった後も席から離れない姿を見ていると、顕微鏡は没頭できるテーマであり、奥行きの深さを改めて感じます。子どもたちのピュアな気持ちに触れることができ、心が洗われる思いでした。
これらの活動に取り組む意義
斎藤:ワークショップの中でお話しした、「光」や「デザイン」といった言葉や印象が心に残ったり、経験したことが、将来に少しでもつながりが生まれたりするようであれば、嬉しく思います。子どもたちが大きくなったときの、「あっ、あのときの」につながる種がまけたのかなと思います。
山田:カメラワークショップでは「なぜ、撮れるのか」を、原始的な仕組みを用いて体感してもらいました。これをきっかけに、疑問を持つこと、便利の裏には仕組みがあることに気づいてもらい、この先も「なぜ」と思える気持ちを育んでもらいたいです。加えて、カメラをはじめ、デザインは日常の至るところにあふれています。日々、見て触るものすべては目的をもってデザインされていることを知るきっかけにもなれば、と思っています。
大場:本大会に出場したアスリートの中にもケガや病気と闘ってきた方がいらっしゃいますが、こうした不調を治す医療現場や研究所では顕微鏡が必ず使われ、役に立っています。顕微鏡がいろいろな場所で、いろいろな方に貢献していることを知ってもらう場としてワークショップを活用していきたいですね。
今後の展望や抱負
斎藤:こうした取り組みを通し、私たちのプロダクトであるカメラや顕微鏡に触れる機会をお届けすることで、たくさんの人にニコンの製品を知っていただき、子供たちには、そこに関連する様々な世界に興味を持っていただきたいと思います。
山田:近年、STEAM教育が注目されていますが、ニコンのワークショップも発展させていけば、こうしたものにつながっていくと思います。たとえば、教育機関の一つのプログラムとして、もっと多くの子どもたちに取り組んでもらえるような、そんな規模まで発展できれば、ますます意義あるものになると思います。
大場:「理系離れ」が言われて久しいですが、子どものころから科学に触れることは大事だと思います。お勉強という意味合いではなくとも、顕微鏡を覗くことで、「こんな世界があるんだ」のように、興味の芽生えるきっかけをこれからも提供していきたいです。
たくさんの子どもたちの笑顔と好奇心に出会えた、本キッズプログラム。この先もニコンのサービス・プロダクトを介し、未来の社会で活躍する子どもたちへのニコンならではの取り組みを続けてまいります。
※所属、仕事内容は取材当時のものです。